twanosuu による肇
初めに、何も無かった。
一羽のトヮノスー鳥 twanosuu が、たゞ、みづから在らざる者であり、何處にも在らざる者として、其處に在った。一羽のトヮノスー鳥は、總てのトヮノスー鳥であった。 世界には、何も無かったので、トヮノスー鳥は何處迄も飛ぶ事が出來た。トヮノスー鳥は何處迄も飛ぶ事が出來たが、何處迄飛んだのかは良く判らなかった。世界には、何も無かったからである。
其處でトヮノスー鳥は、足を組んで坐った。坐った時、彼の下から聲がした。「其處を退け。」トヮノスー鳥の下には、もう一羽のトヮノスー鳥が在った。一羽のトヮノスー鳥は、總てのトヮノスー鳥なので、もう一羽のトヮノスー鳥とは、總てのトヮノスー鳥の事である。
「此處を退く事は出來ぬ。」と、トヮノスー鳥は應へた。一羽のトヮノスー鳥は、總てのトヮノスー鳥なので、應へたトヮノスー鳥とは、總てのトヮノスー鳥の事である。「私の上に坐ってゐるトヮノスー鳥が退かぬ事には。」一羽のトヮノスー鳥は、總てのトヮノスー鳥なので、上に坐ってゐるトヮノスー鳥とは、總てのトヮノスー鳥の事である。
トヮノスー鳥は、みづからを退く事が出來なかったので、上に坐ってゐるトヮノスー鳥を、其のくちばしで啄んだ。
一羽のトヮノスー鳥は、總てのトヮノスー鳥なので、啄んだトヮノスー鳥とは、總てのトヮノスー鳥の事である。
且つ、啄まれたトヮノスー鳥とは、總てのトヮノスー鳥の事である。
此處に於いて、總てのトヮノスー鳥は、皆、みづからを啄んだ。總てのトヮノスー鳥は、其の痛みに激しく暴れ、高く啼いた。斯くして、總てのトヮノスー鳥は、多くのトヮノスー鳥に成り、散り散りに成った總てのトヮノスー鳥は互ひを見失った。其の互ひに探しまはる閒隙こそが、此の世界である。
古い ver.
初めに、何も無かつた。
一羽のトヮノスー鳥丈は只、自らあらざる者であり、何處にもゐない者として其處にゐた。一羽のトヮノスー鳥は全てのトヮノスー鳥であった。
世界には、何も無かつたので、トヮノスー鳥は何處迄も飛ぶ事が出來た。トヮノスー鳥は何處迄も飛ぶ事が出來たが、何處迄飛んだのかは良く分からなかつた。世界には、何も無かつたからである。
其處でトヮノスー鳥は、足を組んで坐つた。坐つた時、足の下から聲がした。「其處を退け。」トヮノスー鳥の尻の下には、もう一羽のトヮノスー鳥がゐた。一羽のトヮノスー鳥は全てのトヮノスー鳥なので、もう一羽のトヮノスー鳥とは、足を組んで坐つたトヮノスー鳥の事である。
「退く事は出來ぬ。」トヮノスー鳥は應へた。一羽のトヮノスー鳥は全てのトヮノスー鳥なので、應へたトヮノスー鳥とは、下に坐られてゐるトヮノスー鳥の事である。「私の上に坐つてゐるトヮノスー鳥が退かない事には。」一羽のトヮノスー鳥は全てのトヮノスー鳥なので、上に坐つてゐるトヮノスー鳥とは、應へたトヮノスー鳥の事である。
トヮノスー鳥は、自らを退く事が出来なかったので、上にゐるトヮノスー鳥を啄んだ。然し其れは下にゐるトヮノスー鳥だったので、全てのトヮノスー鳥は自らを啄み、其の痛みに激しく暴れ、高く啼いた。此の事で、全てのトヮノスー鳥は、多くのトヮノスー鳥に成り、其の隙間が此の世界である。